夜。細い三日月だけが静かに煌く。
「おい、駿(シュン)。いいとこに連れてってやるよ。来るか?」
隣の布団から、兄の声がした。
「行く行く!」
「よし。でも大兄には言うなよ。うるさいから」
「分かった。大兄ちゃんには言わないよ。」
兄弟はこっそり家を抜け出し、古い工場跡へやってきた。
「ここには何があるの?」
「まぁ、待てよ。」
兄は建物に近づき、扉を開けた。
「兄ちゃん、怒られない?」
周りをキョロキョロ見回して、駿はひっそり声で言った。
「大丈夫。ここは怒る人がいないから。」
ニタッっと笑って、兄は中へ入って行ってしまった。
「僕をひとりにしないでよー」
駿も、兄を追いかけて中に入った。
扉は駿が入ると同時にバタンと閉まってしまった。
駿は怖くなったので兄に走り寄り、体をギュッとつかみ、すがりついた。
「ねぇ、もう、いいよ。」
「何言ってんだよ。灯りも持ってきてるし、大丈夫さ。
よく見てろよ。」
そう言って兄は懐中電灯のスイッチを入れる。
「っ!」
駿は驚きひっくり返った。
兄の懐中電灯の光に映し出されたのは、大量の手榴弾だった。
「兄ちゃん・・・か、帰ろうよ・・・。」
「なんだ駿。怖がりすぎだ。
不発モンだし、触らなきゃ大丈夫だって。」
「ち、違うよ。その裏・・・。」
「裏?」
恐る恐る光を手榴弾の影に持っていく。
そこに映し出された物は死体。
彼らは家へと一目散に逃げ帰った。
-------------------------------------------------
「に、兄ちゃん・・・」
「怖くて確認できなかったけど・・・あれは誰だったんだろう?」
「もう、行きたくないよ!」
布団の上で兄弟は震える。
「ほんとに・・・死んじゃったのかな?」
「とにかく、明日警察にいこう。」
「うん。」
-------------------------------------------------
「お早う。二人とも寝坊だ。学校遅刻するなよ。」
「・・・おはよう。」
「おはよう。大兄ちゃん。」
目を擦りながら二人は食卓につく。
「なんだ、今日は大人しいな。・・・駿。目が腫れてるぞ。」
「え、あ・・・。何でもないよ。」
「母さんの夢でも見たのか?」
「あの・・・」
「そうだよ。こいつ昨日、『お母さーん』ってまた泣いてさ。俺もそれで眠れなかったんだよ。駿、気持ちは分かるが、いつまでも泣くな。男だろ。」
「そうなのか?駿。」
「・・・うん。」
大兄は疑わしい顔をしていたが、そのまま、いつものように仕事に行った。
「よし。行こう」
兄弟は自転車に二人乗りをして、再び工場跡へ向かった。
「兄ちゃん、警察は?」
「人が寝てただけで、実は生きてたって可能性もある。
俺らは見ただけなんだからな。だから、まず確認だ。」
「えー!あんなとこ行きたくないよ!」
「じゃ降りろ。」
兄ちゃんは自転車を止めた。
「降ろさないで!」
「じゃ来るんだ。」
駿は乗り気がしないまま、兄にしがみつく。
昨日の夜よりも早く、工場跡に着いた。
「ホントに入るの?」
「嫌ならここで待ってろ」
駿はひとりで待つのも恐ろしかったが、中に入る勇気が出なかった。
「・・・・待ってるからね!」
「すぐ戻る」
駿は自転車の側で兄ちゃんを待った。
「すぐ戻るって言ったのに・・・」
兄ちゃんが帰ってこない。
「に、兄ちゃん!」
「おい、駿(シュン)。いいとこに連れてってやるよ。来るか?」
隣の布団から、兄の声がした。
「行く行く!」
「よし。でも大兄には言うなよ。うるさいから」
「分かった。大兄ちゃんには言わないよ。」
兄弟はこっそり家を抜け出し、古い工場跡へやってきた。
「ここには何があるの?」
「まぁ、待てよ。」
兄は建物に近づき、扉を開けた。
「兄ちゃん、怒られない?」
周りをキョロキョロ見回して、駿はひっそり声で言った。
「大丈夫。ここは怒る人がいないから。」
ニタッっと笑って、兄は中へ入って行ってしまった。
「僕をひとりにしないでよー」
駿も、兄を追いかけて中に入った。
扉は駿が入ると同時にバタンと閉まってしまった。
駿は怖くなったので兄に走り寄り、体をギュッとつかみ、すがりついた。
「ねぇ、もう、いいよ。」
「何言ってんだよ。灯りも持ってきてるし、大丈夫さ。
よく見てろよ。」
そう言って兄は懐中電灯のスイッチを入れる。
「っ!」
駿は驚きひっくり返った。
兄の懐中電灯の光に映し出されたのは、大量の手榴弾だった。
「兄ちゃん・・・か、帰ろうよ・・・。」
「なんだ駿。怖がりすぎだ。
不発モンだし、触らなきゃ大丈夫だって。」
「ち、違うよ。その裏・・・。」
「裏?」
恐る恐る光を手榴弾の影に持っていく。
そこに映し出された物は死体。
彼らは家へと一目散に逃げ帰った。
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「に、兄ちゃん・・・」
「怖くて確認できなかったけど・・・あれは誰だったんだろう?」
「もう、行きたくないよ!」
布団の上で兄弟は震える。
「ほんとに・・・死んじゃったのかな?」
「とにかく、明日警察にいこう。」
「うん。」
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「お早う。二人とも寝坊だ。学校遅刻するなよ。」
「・・・おはよう。」
「おはよう。大兄ちゃん。」
目を擦りながら二人は食卓につく。
「なんだ、今日は大人しいな。・・・駿。目が腫れてるぞ。」
「え、あ・・・。何でもないよ。」
「母さんの夢でも見たのか?」
「あの・・・」
「そうだよ。こいつ昨日、『お母さーん』ってまた泣いてさ。俺もそれで眠れなかったんだよ。駿、気持ちは分かるが、いつまでも泣くな。男だろ。」
「そうなのか?駿。」
「・・・うん。」
大兄は疑わしい顔をしていたが、そのまま、いつものように仕事に行った。
「よし。行こう」
兄弟は自転車に二人乗りをして、再び工場跡へ向かった。
「兄ちゃん、警察は?」
「人が寝てただけで、実は生きてたって可能性もある。
俺らは見ただけなんだからな。だから、まず確認だ。」
「えー!あんなとこ行きたくないよ!」
「じゃ降りろ。」
兄ちゃんは自転車を止めた。
「降ろさないで!」
「じゃ来るんだ。」
駿は乗り気がしないまま、兄にしがみつく。
昨日の夜よりも早く、工場跡に着いた。
「ホントに入るの?」
「嫌ならここで待ってろ」
駿はひとりで待つのも恐ろしかったが、中に入る勇気が出なかった。
「・・・・待ってるからね!」
「すぐ戻る」
駿は自転車の側で兄ちゃんを待った。
「すぐ戻るって言ったのに・・・」
兄ちゃんが帰ってこない。
「に、兄ちゃん!」
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