今思う

2004年9月5日 音楽
歌を歌いたい。
本気で歌いたい。
ちゃんと練習して、自分なりの本番の日を作り、歌いたい。

心に沁みる、切ない、そんな詩の歌を。

歌いたい
朝、5時10分ごろ。

私の住んでいるところは、高層ビル群のある、ベッドタウン。
その、高層ビル群は3つや4つのマンションではなく、
20も30もの14階以上のマンションが立ち並んでいる。

海と山に囲まれ、
人は適度におり、自然も適度にあり、交通も不便とは感じない。
恐らく名前を出せば、知っている人は知っている街。

朝、5時10分ごろ。(繰り返し

この街は一番緑の香りがする。
自然学校の朝のような、冷たくて澄んだ、緑のかおり。
駐車場の向こうから ゆっくりと昇る太陽が見たくて、
おばちゃんたちが、家から出てくる。
窓から おばちゃんたちを見下ろし、私も太陽を見る。
煌煌とオレンジと赤の光を放ち、
太陽が自らがやってくる気配を空一杯に描き出す。

この街の通勤ラッシュには、まだ、2時間ほどある。
人口8万人。
何人がこの朝日を見ているんだろう。
悲しいこと、口に出さないようにしていても、
どうしても聴いて欲しいってときがある。

口に出してもどうにもならないって、分かっていても、
どうしても聴いて欲しいってときがある。

でも、それを聴いてやろう!っていう人は、
なかなかいないと思う。
本当に聴いて欲しいことって、かなりプライベートだったり、
自分でも重いと感じるくらい、重かったりする。

それに加えて、聴く人がまず、それだけ心に余裕がなくちゃ、
うんうんって、聴けない。

みんな、必ず持ってる。
苦しみや気にしている事、望みどおりに行かないこと。

人に話を聞いてもらおうって、いうけど、
それは、確かに自分のためになるかもしれないけど、

でも、
聴いてくれる人は、ストレスが溜まってしまうと思う。
かといって、
誰にも吐き出さなかったら、
自分が爆発してしまうんだよね。

だから、カウンセラーがいるんだとは思う。

でも、やっちゃいけないのは、
カウンセラーを目指した人にカウンセリングしてもらう事。

彼らは目指しはしたけど、結局仕事にしていない。
中途半端な技術は、一番人を傷つける。
人のプライベートに大きく踏み込む、守秘性の高い仕事だから、
これって、名称独占にするべきと思う。

何か問題があるから、そうなっていないのだと思うけれど、
カウンセラーもどきは、恐ろしいと思う。
だって、ただ一言で、モドキが私の友達を
自殺未遂に追い込んだ。

本当に辛い時、カウンセラーもどきではなく、
キチンと職業として成り立っている、
カウンセラーに罹って下さい。

カウンセリングとお悩み相談は、違うんだよっ!

そうでしょ?!保健室のおねーさん!!
昔、グレーでぎゅっと抱けるサイズの、ラッコのぬいぐるみを
持ってました。
小さい時から大事にしてたんですが、
小学生のある日、引越しをしたんです。
その後、そう、ご想像の通り、失ってしまいました。

「あれ?あー、もう古いし、捨てたよ」

うちの家は、ダストシュートにゴミを投入する仕組みで、
捨てたら最後。
もう、ぬいぐるみは帰ってきません。

失ったものを探す術さえなくなった時
恐ろしい虚無感が襲うんですね。
燃えてしまったラッコは、
今はどこかの埋立地に使われているのでしょうか。

あなたは、そういう経験ありますか?
今日は久々に一日中遊んで、スッキリしてきました!
その帰りの話。

「20歳になったら、なんか哀しいな〜。
年金納めたとか就職がどうのとか、現実を直視しちゃうでしょ」

「そうかな。」

「だってさ、子供の頃はもっと何も知らずにいられて、
なーんも考えずに、好きなことに没頭できた」

「でも、子供の頃は何も知らなかったんだよ?
それは凄く恐い事だと今になって分かった。」

「それは分かるよ。
でも、高校とか中学の時が一番楽しかったって、
どうしても思っちゃうんだよね〜」

「その時その時の良さはあるよね。
でも、今はいろんな事を、自分の目で確認するべきって思う。
変な大人に騙されないようにする術も、昔よりかは持ってる。」

「そっかー。・・・うん。なんか分かるような気がする。」

「若くいることも素敵だけど、
年を重ねることも私は素敵だと思うな。」

「それもいい考えだね。」


20歳になると、ティーンエイジャーを卒業して、
開放感と責任感と少しの不安が、
心に棲みつくようになりました。

でも、それは自分の人生が
自分の物になった瞬間でもあるような…

急に19歳・18歳が若く感じてしまったり、
タバコもお酒も誰にも止められないと思うと、
嬉しいような・・・何か別の感情も混じっているような・・・

中学高校のような居心地の良さを
大学で無性に求めてみたりしてしまうような・・・

大人になる事は、ある種の抵抗を感じずにはくぐれない、
大人になる人には誰にも訪れる、人生の分岐点のこと・・・

誰かに守られ続けていた子供時代の扉を開く時、
私たちの本当の人生が始まるのではないでしょうか。。。
全国大会で発表された時は、これほど嬉しい言葉はないと、
疑いもしなかった。

副部長と共に、
大勢の部員の元へトロフィーと賞状を持って帰る。

「金賞やでー!」

そう叫ぶと部員たちが抱き合い、涙し、互いに声をかける。
しかし…
部長の元には誰もいない。
多すぎる部員。
しかし部長の元には、誰も近寄らない。

それに誰も、気付かない。

金賞とかゴールドという言葉を聴くと、
あの一瞬を、思い出してしまう。
嬉しい言葉の筈が、苦い思い出をも引っ張り出す。

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あとがき

情けないかな・・・自分の話。
リーダーという席は、恐ろしい。
注目されるか、無視されるか。

いや、この後は普通に、そう、いつもどおりでした。
たまたまです。
ただ、ね。偶然でも、寂しいなって。
人数が多いと、恐ろしい偶然が、起こるもんですね(^^;
それとも、嫌われてた?(苦笑
雨が降る中を、仲良しな木が2本、
寄り添うように立っていた。

ベンチがあるだけの公園。
仲良しな2本の木の周りには、
木と友達のような岩達。

雨宿りをしに、カラスがやってくる。
羽の水を飛び散らせ、乾かしている。

カラスの近くに、綺麗な鳥も同じ木に止まった。
蝉も止まった。
私は屋根のあるベンチで雨宿り。

みんなで雨宿り。
周りはマンションやビルばっかりなのに、
ここだけ、静かな林の中の小さな公園みたい。

「雨、やまないね。」

木と自分の間にある、
無数の小さな水溜りを眺めながら、
再び私は傘を差す。

「ばいばい。」

誰にいうでもなく、
何となく寂しくて、
声をかけてみた。

カラスは、いつの間にか別の木に移ってしまったようだ。
今年の夏も、終わろうとしている。

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あとがき

家族は、求めて手に入るものでしょうか。
子供は、ついて行くしかないのでしょうか。

親が離婚した時、子供はどうすればいいのでしょうか。
どうしようもなく、寂しくて、誰かにいてほしい時、
家に誰もいなかったら、どうしたら良いのでしょうか。

子供は、一人で泣くしかないのでしょうか。

そういう思いをする子供を、
もう、増やしたくないと思うのは、私だけでしょうか。

親も人間だけれど、もう、離婚は避けられないのでしょうか。
彼らの涙は、避けられないのでしょうか。

父親を欲して、歪んだ愛情を求める人を、
私は見過ぎたのでしょうか。
感情的に、なり過ぎでしょうか。

雨は、すすり泣く声を掻き消して、静かに見守っています。

ブラスト!

2004年8月23日 音楽
DVD ワーナーミュージック・ジャパン
2003/07/16 ¥5,000
アメフトの試合で
マーチング・バンドが演奏する場面が好きならば、
『ブラスト!』を気に入るはずだ。
活気にあふれ、さまざまなパートがぴったりと寄り添うバンド。
格好いい衣装を身につけた面々が登場するのは、
黒と白のチェックが描かれたステージだ。
色とりどりのスポットライトを浴び、
『ストンプ』の様相さながら、思わず息をのむ演奏…

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今週、大阪公演のためにブラスト!が再来日するので、
観に行きます。(東京公演は終了済み)

前回(去年)は東京公演(オーチャードホールにて)を観たんですが、
やっぱり、
音楽とか演劇とかは自分の目で観るのが一番ですね。
ブラストをDVDを観た人は知っていると思いますが、
休憩時間もパーカッション・セクションの人が演奏してくれます。

それがめちゃめちゃカッコイイ!

スティックで椅子や黒バケツをリズミカルに叩くだけで、
心臓と共鳴するんです!
おもわず乗ってしまう、おもわず口ずさんでしまう、
しかも間にカッコいい、スティックさばきが入ってる!

前回の東京公演では、
前半が終わり、休憩が始まったと同時に走り出し、
頑張って見える場所を探したんですが、間に合わず・・・・。
どの観客の皆さんも、大慌てでロビーに出ていましたので。

今回こそは、最前列で観たい!

あまりに楽しみでDVDを観て、欲求を抑えているほどです。
私は土曜日に観に行くので、早く土曜日になってほしい!
前回はA席、今回はS席。
出来れば、ホルンの人と、握手したいなぁ。出来るかなぁ。

きっと今回も、一生の思い出になる。
だって、憧れのブラストを間近で見られるんだから!
自分は自分の視点でしか語れない。

人の気持ちを考えようって教えられてきたけど、

相手の立場や、生い立ちや、意志など、

幅広く知っても、結局、自分以外の人の気持ちは

分からない。

予測するしかない。

結構、ギャンブルだよね。

この夏、お土産を買った人も多い筈。

これなら貰ったら嬉しいかもしれない。

と予測して買うしかない。

お土産買うのも、結構、ギャンブル。

電話で聞くわけにもいかないしね。

でも、失敗のほうが、多いだろうね。

喜んでくれるかなんて、相手の気分と趣味による。

一生懸命選んでくれたモノには、

用意してくれたことに対して、

ありがとう

って言いたいな。

星の眺めかた

2004年8月21日 ポエム
夜空をグラウンドに出て、眺めた。
夜空をベンチに座って、木の葉っぱ越しに眺めた。
立ち上がり1つの星だけを見て、
夜空をくるくる回って、眺めた。

家々の電気がまだ、たくさんついている時間。
星もそんなに見えているわけではないけれど、
眺めていると、幸せだ。

最初は自分がいろいろ動いて、
いろんな眺め方をした。

でも最後は、
雑草の上に座って、
手を後ろについて、
足を放りだして、
空気を感じながら

眺めた。

虫が飛んでいる。
風が髪を揺らしている。
木が葉っぱをこすり合わせている。

そんな時間が、何だか、幸せ。
美しい和音が奏でられるように
調和を慈しもう

時には激しく飛び出た音色も必要だろう
人との関係を音色に乗せ
さまざまな調べを奏でよう

大地に根づく血の音を奏でられるように
リズムを刻もう

リズムは合わせるモノではなく作り出すモノだろう
様々なリズムを混ぜ合わせ
新たなリズムを作り出そう

*♪* *♪* *♪* *♪* *♪*

調和が取れてるだけじゃ 面白くない
美しい調べに乗せて自在に変化させるから 面白い

人とただ仲がいいだけでは 面白くない
その人のいろいろな面を発見するから 面白い

相手と波長が最初から合ったら 確かに楽だ
でも少し波長の違う人とも過ごせて
対応できるようになったら 結構面白いと思う

毎日を音楽に例えて
その抑揚の豊富さ
リズム感の相違を
楽しみたい
物語とか創作じゃなく。

日記って、緊張するな。
・・・えっと(焦

今年は雨で花火が見れなかった。
大きな花火を、派手じゃなくていいから、見たかった。

どーんどーんって、朝顔が開くみたいに
ぱぁって広がる、あの花火が見られなかったのが、
今年の残念。

去年は、寒くて海に入れなかった。
でも、今年は入れた!

そんなちっちゃな不幸と幸せを噛み締められたら
どんなに素敵だろう。

でも残念。
結構私は欲が深くて、
そんな可愛いことがいえない。

ほんとに花火見れなくて寂しいのに、
去年は海に入れなくてしょんぼりだったのに、
声に出すと・・・

「花火なんて見るだけじゃん。」
「海なんて塩っ辛いし、入りたくないね。」
とか、言ってしまう。

きっと、それが私の本心なんだろうな。

可愛いこと思ってるフリして、
憎まれ口が本音なんだよ。

でも実際、寂しいんだけど・・・口に出ない。

私の本心は、一体、どっちなんだろう・・・
第1部 始まり

深夜、15歳くらいの少年がガレキだらけの道を歩いている。
彼は探していた。
何の役にも立ちそうに無いものはそこら中に転がっているのに、
彼が望むものは見つからない。
探し始めて、何日経ったのだろう。

数日前、少年の家は火事に遭っていた。
風の強い日、一軒の火事が飛び火し、
近辺を焼き尽くしてしまった。

古い木造の家々は数日燃え盛った。
今はその焼け跡さえ片付けられることなく、
道端で人々は暮らしている。

(これからは一人で生きるんだ。でも僕にできることは・・・
絵を描くことだ。たくさん良い絵を描いて、売るんだ・・・)
そんな衝動に駆られ、彼はキャンパス用の板を探している。

「何を探しているの?」
不意に少年と同じ歳くらいで、
顔もどこか似ている少女が話しかけてきた。
「・・・・」
少年は反応しようとしない。
「話したくないの?それとも・・・話せないの?」
少女はいくらか話しかけてみるが、少年からの返事は無い。

「いつもひとりで居るみたいだね。うちに来ない?
辛うじて屋根があるだけで、何も無いけど、こんな時だし、
一緒にご飯食べない?」
「遠慮しとく。」
妙に大人びて少年は反応した。
初めての返事だったが、少女はそれを指摘しなかった。

辺りが紫がかり、
朝が来ようとしていたが、日の出にはまだ時間がある。
二人は次の日暮れに会おうと約束し、そのまま分かれた。
薄明かりの中、少年は眠りにつき、
少女は朝日の方へ去っていった。

第2部 雨

「雨、止まないね。」
少女は少年に話しかける。
”次の夕暮れ”に少年は約束どおりに来たのだ。
二人は雨宿りをしながら、会話をはじめた。
ただ、少女から話しかけ続けるということに、
変わりは無かった。

しかし、変化が起きた。
「君には、家族はいるの?」
少年が話しかけた。
「・・・火事で死んだわ。」
「ぼくと同じなんだね。こんなことしていて、いいの?」
「こんなことって?」
「ひとりでブラブラしてるだろ?」
少女は少し笑った。
「いつも、板を探してるみたいね。見つかった?」
「・・・まだ。」
「急いでさがしてるみたいだけど、どうしてそんなに急ぐの?」
少年は思いもかけない言葉に戸惑った。

雨は強さを増していく。
足元の水溜りが大きくなり、風も出てきた。
空を埋め尽くす雲は、まだ黒く横たわっている。

ふたりの間の時間が、しばらく止まっていた。
雨は一向に降り止まない。

「絵を、描かなくちゃいけないんだ。」
少女はこくりと頷いた。気づくと、風は止んでいる。
「これからは一人で生きていくんだ。仕事をして、お金を稼ぐ。
でも、僕には絵を描く事しかできない。」

「お金を稼いで、どうしたいの?」
「どうしたい、ってことじゃなくて、
今までは父さんが働いていてくれた、あのお金を、
今度は自分で稼ぐんだ。それだけのことだよ。」
「そのお金を稼いだら、どうするの?」
「・・・関係ないだろ。あっち行けよ。」

少女は悲しそうな顔をして立ち上がり、激しい雨の中を
とぼとぼと歩き去った。
少年はその後ろ姿をじっと見ていたが、呼び止めず、
少女から視線をそらした。

第3部 絵画

次の日、雨はピタリと止み、少年はいつものように探していた。
しかし今度は、キャンパス用の板ではなく、少女を探した。

声を張り上げ、彼は叫んだ。
今探さなければいけないのは、あの少女なのだと、
少年の中の何かが叫んでいる。
彼は、心のままに叫んだ。

「そんなに大声で呼ばなくても、聞こえるよ。」
少女は昨日の事など無かったかのように声をかけてきた。
「あ、あのさ・・・・昨日は、ごめん。」
「うん。・・・ねぇ、これ貰って来たから、絵、描いてくれない?」

「これ、どっから持ってきたの?」
「描いてくれるの?描いてくれないの?」
「分かった。描くよ。」
少年はポケットから黒のコンテを取り出した。
「じゃ、そこに座ってくれる?」

少女がくれた白いキャンパスを立て向きに置き、
安定するように近くに立てかけた。
被写体はガレキで埋まっている街と、
昨日雨で濡れてしまったモノを焚き火で乾かす人々、
そして、自分に話しかけてきた少女だ。

数時間経ち、絵が完成した。
少女は満足げに絵を見ると、
「じゃあ、もう帰るね。」と言って去ってしまった。
キャンパスを眺めると、裏には少年の父のサインが入っていた。
「・・・父さんが使うはずだった、キャンパスだ。」

第4部 見守られるもの
夜、少年は居酒屋に居た。
少年は大勢の大人に囲まれ、絶賛されていた。
同時に、久しぶりの楽しい時間と、温かい夕食に恵まれた。

つと、元美術館を経営していた館長が、少年の絵を覗いた。
「これは素晴らしい!新しい美術館が出来たら、是非、
うちのために絵を描いて下さらんか!」
思いがけず話が進み、少年は喜んだ。

(そうだ。あの子にお礼を言わなきゃ。あの子のおかげだ。)
そう思い、隙を見て席を離れようとした時、
近くにいた女性が声を上げた。
「これ、あなたのお母さんの小さい時にそっくりね!」
少年は驚いた。
彼女は昨日フラれた。
「君の傲慢さにはもう、ついていけない」
それが理由だった。

彼女が一人で生きた理由

今流行りの心理学部1回生の彼女は、
昨日、彼にフラれたばかりだった。
「どうしてよ。あんなに尽くしたのに!」
「心理学なんて全然役に立たないし、面白くない!」
前期に使い込んだ教科書を、部屋の壁に投げつけた。

高校時代から付き合っていた彼にもっと好きなって欲しくて
心理学科のある大学を選び、
対人関係に関する講義を積極的に取った。
しかし
「最近、君が重いんだ。」
その言葉と共に
「君の傲慢さにはついていけない。別れよう。」

部屋で彼女は泣き出した。
初めて彼氏が出来て、せっかく長続きしたのに。
(何がいけないって言うの?)
机の写真を見て、彼女は心の中で尋ねた。
(重い。傲慢。そう、重いの。傲慢なの。あいつだって・・・)

夏休みに入って、友達にもあまり会わなくなった。
(携帯・・・メール来るわけない・・・けど・・・)
彼からのメールはもう来ない。
分かっているのに、新着メールを問い合わせてしまう。
お盆だからか、友達からも来ない。

(今年は彼と旅行に行くからって、
お盆休みは帰らないことにしちゃっしな。
あいつ、勝手にキャンセルしたし。)
ため息をついて立ち上がり、窓の外を眺めた。
(山が綺麗。時間余ってるし、登ってみようかな)

川沿いに歩いていると、
綺麗な白髪の夫婦が写真を取ってくれませんかと
彼女の元へ来た。
「お願いします。」
差し出された写真は今発売されているデジカメとは違い、重かった。
「じゃぁ取りますね〜。ハイチーズ。」
嬉しそうに夫婦は
「ありがとうございます。」と丁寧にお辞儀をした。
「あなた、お一人なんですか?」
続いて婦人のほうが声をかけてきた。
「ええ。ちょっと、歩いてみようかなと思い立ったので。」
「良ければ、一緒に歩きませんか?」

そんな成り行きで日暮れまで、3人は川沿いをのんびりと歩いた。
老夫婦と歩くなんて。と最初は思っていたが、
友達と話すよりも楽しかった。
会話も昔の恋の話、テレビで話題の人、楽しい場所など
様々で、自分達とあまり変わりが無かった。

「ところで、お二人にはお子さんはいらっしゃらないんですか?」
「いいえ。それが、いないのよ。」
「あ、ごめんなさい。」
「いえ、良いんです。それが、僕たちの意志ですから。」
「子供が・・・いらなかったんですか?」
「いいえ。私たち、結婚していないの。戸籍を入れてないのよ」

彼女は驚いたが、その後旦那さんが詳しく話してくれた。

昔、哲学者の夫婦がいました。
彼らは、戸籍をいれずに、同棲のままで互いを愛しました。
普通なら戸籍が無く、子供もいなければ、
簡単に別れられる。だから周囲の人はいつか別れるだろうと
誰もが噂しました。結局実験なのだからと。
しかし、彼らは互いに切磋琢磨し、互いを愛し続けました。

私と妻はその二人の関係に憧れ、今実践している最中なのです。
結局、人間は一人では生きられない。
しかし、頼りすぎたり心が狭くては、一人で生きる羽目になる。
逆に、やりすぎたり、押し付けるのも問題だね。
本当の意味で相手を慈しまなければ、
特に夫婦は、やっていけないんですよ。理想を高く持つならね。

夕暮れ、彼女は元の彼に電話をした。
「急に電話してゴメン。今、時間いい?・・・うん。ありがと。
私、あなたのためだと思って、いろいろしてきたけど、
それは、私の自己満足だった。
押し付けて、ゴメンナサイ。
私、自分ばっかり大事にして、あなたを大事に出来てなかった。
もし良ければ・・・もう一度やり直すって出来ないかしら?」

ふたりは5年後、めでたく結ばれた。
彼女は過去に人を殺している。
警察には正当防衛だと言われ釈放されたが、
彼女の心には深い傷がついてしまった。

数ヶ月前、事件は起きた。
彼女は家族と国外へ旅行に出かけていたのだが、
その先で銃乱射の現場に出くわしてしまった。
彼女の家族も傷を負った。
彼女も必死で逃げた。

飛び交う銃弾の中、一人の男の背が近づいた。
それとほぼ同時に、犯人の一人と彼女は目が合ってしまった。
とっさに男の背に隠れた。

そして男に銃弾があたり、彼はその場で亡くなった。

彼女はあの時の事を今でも鮮明に覚えている。
何度も忘れようとしたが、
家族のいない家に一人で住んでいるからか、
どうしても寸刻みに思い出す。
「ごめんなさい」
「助けて」
その言葉ばかりがグルグルと回る。

今日は盾にしてしまった桐島という男性の墓を訪れた。
毎日家族と男性の墓へ、交互に訪れるのだ。
「今日は暑いので、ポカリスエットを持ってきました。」
いつものように綺麗に洗ったコップにポカリスエットを注ぐ。

「こんにちは。今日も暑いですね。」
男性のお墓参りに来ると、必ず道路付近に少年が立っている。
「あなたは、僕が守る」
おかしな返事をするなと思ったが、彼女は気にせず車に乗った。
すると、少年が近づきコンコンと、窓を叩く。
「今日はトンネルのほうへいっちゃダメだよ。崩れる。」
「へぇ〜教えてくれて有難う。じゃ今日は高速に乗らないで、下の路で帰るね。」
変な子だとはおもったが、少年が行ったとおりトンネルを通らず、下の路を選んだ。
別にどちらで帰っても、大して変わらないからだ。

田園を眺めつつ、彼女は車のラジオを聞いていた。
旅行先で起こった事件の犯人は、まだ数人逃げているそうだ。
実行犯は捕まったが、計画した首謀者が見つかっていない。
そんなニュースが流れてきたから、彼女はチャンネルを変えようとした。
「臨時ニュースです。
先ほど先日の大雨の影響で大きな地すべりが発生しました。
インターチェンジと付近の高速道路を巻き込み、負傷者が出ています。
その数は30名以上と見られており・・・・」

翌々日、彼女はいつもの時間に、彼の墓へやってきた。
あの少年はいないだろうかと探しながら。
「あなたは、僕が守る」
その声を聞き、彼女は振り向いた。
「この前は、ありがとう。」
「あれ、お兄ちゃんが教えてくれたんだ。」
少年は彼女がいつも訪れている墓を指差した。
「僕のお兄ちゃん。」
どうしていいか混乱している彼女に少年は淡々と話す。
「お兄ちゃん、怒ってないよ。ねぇ、あした、この病院に来て。病室にいるからね。」
少年は病院の名前と住所が書かれた紙飛行機を飛ばした。
そして、そのまま去った。

翌日、彼女はその病院を訪れた。
「あの、ここに桐島・・・っていう男の子、来ていませんか?」
「この子なら、今、手術中です。付き添いでしたら、4階へ上って下さい。」
4階では会った事のある女性がうつむいて座っていた。
「お久しぶりです」
「あなた・・・どうしてここに?」
「昨日、男の子に呼ばれて。手術の日だったんですね。彼には、お兄さんのお墓でよく会いました。だから、顔見知りなんです。」
「あなた、何言ってるの?あの子、ずっと寝たきりなのよ。昨日、やっと自分で起き上がって、手術が受けられるくらいにはなったから、今のうちにって。」

その日、少年は亡くなった。
「兄弟で私を守ってくれて有難う。」
葬儀で彼女は棺の少年に語りかけた。
「もう、気にしないで。お兄ちゃんはあなたを守るために近くへいったんだ。あなたは、僕たちの分も生きてね。」

少年の声が、聴こえたような気がした。

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